令和3年度定時会員総会・特別講演会のご報告
令和3年度定時会員総会・特別講演会
講演テーマ
「水を制する事が未来を制する」
令和3年5月27日(木)
講師
株式会社エバートロン(東京都)代表取締役 田中 久雄氏
二十歳から会社を起業して47年間社長業をやっている。20代の時に自分は “世の中にない事業” しかやらないと決めた。新しいマーケティング戦略を確立して全く新しいお客さんを生み出す、という哲学でずっとやり続けている。
事業コンセプトは「EARTH」だ。EARTHのEからエコロジー。真ん中のARTからアート。最後のHがヒューマン。つまり環境によくて、体に良くて、アートを感じられる事業。地球と人間に関わる、エコロジーデザイン、アートデザイン、ヒューマンデザインの3つの事業のコンセプトを貫いている。
1986年にはダイソンの掃除機の日本の販売権を取得して展開した。その次に手がけたのは冷蔵庫。なぜこの二つだったかというと、世界でも最も普及している家電にも関わらず、何百年もの間テクノロジーが進化していないものだったからだ。マーケットは大きいほうがいい。冷蔵庫の冷却機能を研究するうちに「鮮度維持」という技術の革新を得た。
今やっている株式会社エバートロンは、一言で言って「水分子をコントロールするテクノロジーカンパニー」だとご理解いただきたい。社歴52年のうち46年間ただひたすら一滴の水だけを研究している。それほど水は奥が深く、現代物理学でも解明されていないことが多い。研究してわかったことは地球のすべての問題に水が関わっているということだ。水を制することが食や健康、ものづくりやエネルギーをも制することになる。例えば、壁のひび割れ、剥離も水。人間も体内の水が滞留することで病気になる。食品も水分が腐るとダメになる。だから水をコントロールすれば鮮度も品質もコントロールできる。
世界のフードテック市場は800兆円と言われ、10年前からなんと117倍の成長を遂げている。水分子コントロール技術を導入して最初に「Dr.フライ」という揚げ物の機械を作った。おかげさまで様々なメディアに取り上げられ、いまや日本のトップブランドに躍り出ている。
水分子コントロールの技術を簡単にいうと、一滴の水にわれわれが開発した電波振動を加えて極小化する技術である。一滴の水を極小化することは、効率を上げ、コスト削減にも大きく貢献する。例えば化粧水の分子を小さくして肌によりよく浸透させたり、ガソリンの水噴射で燃焼効率を上げたりもできる。
食品や生命体の7割を占める水は、自由水と結合水に分かれている。8割が結合水で、2割が自由水。このフラフラとする自由水が腐ったり、菌とくっついたりして食品が腐敗する。だからこの自由水をコントロールすることが鮮度維持につながる。例えば、魚を干物にして長持ちさせることは、この自由水を飛ばすことである。この原理を応用して、食品や花の鮮度を維持する「フレッシュトロン」も開発した。
人間の血液はおよそ2キロ、実は血管の外に間質液と呼ばれる水が8キロある。薬を飲んでも、点滴をしても、間質液が働かなければ効き目がない。われわれのテクノロジーは間質液を極小化することにより、体液の流れがスムーズになったという研究結果も得ている。ヘルステックの分野も今後ますます伸ばしていきたい。
われわれのような研究開発型の会社は、着眼点がすべてだ。食品の鮮度維持では、普通は、冷やす、真空にする、防腐剤を使う、あるいは早く届ける、とかいろいろな着眼点がある。けれども、われわれは食材の中の水分を極小化するという全く新しい着眼点を得た。根本を突き詰めることが大事だ。根本を追求すれば他の分野にも応用がきくし、大きなマーケットを動かすことができる。