
第39回事業創造講座のご報告
群馬ニュービジネス協議会 第39回事業創造講座
2025年9月11日(木)
地域活性化における道の駅としての役割
講師 取締役駅長 星野 圭佑 氏/株式会社ヤマト 道の駅事業部 部長 兼 株式会社ロードステーション
私は中央総研で地域政策や企業戦略に携わった後、株式会社ヤマトに参画し、前橋市との官民連携で「道の駅前橋あかぎ」の企画から建設・運営までを一気通貫で担ってきた。全国に1,200を超える道の駅が存在する中で、単なる休憩・物販施設から脱却し、地域に根ざした新しい拠点づくりを目指している。
これまでの道の駅は、JA系流通に依存した直売所や、観光案内に偏った施設が多かった。しかしそれでは差別化が難しく、地域の魅力が十分に伝わらない。そこで前橋あかぎでは、自ら315名の生産者を組織し、集荷や規格化を行う体制を整えた。さらに糖度や品質を数値化して「見える化」することで、適正価格での高付加価値販売を実現している。ここに行政予算では整備されにくい遊具やドッグランなどを民間投資で設置し、来訪理由をつくる仕組みを重ねた。
その結果、開業初年度には約440万人、2年目も約400万人近い来場者を迎え、累計で1,000万人を突破した。年間200回を超えるイベント開催も功を奏し、来訪者の15%が市内周遊に波及し、年間50億円規模の経済効果を生み出している。特筆すべきは、これまでの道の駅に少なかった若年層の来訪が多い点であり、地域の新しい関係人口創出につながっている。
『道の駅の役割転換』とは、地域にとって単なる物販拠点ではなく、体験や情報発信のプラットフォームとして機能することだ。SNSでの発信やテレビ取材の戦略的獲得によって、地域に関心を持つきっかけを生み出すことも大切である。官民の役割を再設計し、民間がリスクを取り模倣困難な価値を築くことで、道の駅は地方創生の一翼を担える。
今後は『地域課題を先に掴み、価値を見える化し、関係人口を増やす』ことがさらに重要になる。物販施設から地域のプラットフォームへ。群馬から発信する新しいモデルを磨き上げ、全国に広げていきたい。