12月例会事業創造講座・交流会のご報告
群馬ニュービジネス協議会 12月例会
講演テーマ:『人から始まる、まちづくり』
若きアントレプレナー集団が人口1万人の限界集落を大活性化!
令和3年12月17日(金)
講師
株式会社イツノマ(宮崎県)代表取締役 中川 敬文 氏(WEB中継)
2020年から宮崎県都農町に移住し、まちづくりを担うスタートアップ企業「株式会社イツノマ」を設立。デジタルアソシエーションを軸に、小中学生や若手から生まれる様々なアイデアプロジェクトを提案・実現している。
宮崎県都農町との出会いは、都農町が2020年に100周年を迎えるにあたって町のグランドデザインを作ってもらえないかと地元の方から相談をいただいたことがきっかけ。ちょうど新型コロナの問題が深刻化し、リモートワークや地方創生、地方移住といったことがクローズアップされた時期であった。
都農町は、宮崎駅や宮崎空港から車・電車で1時間ほど。都農ワイナリーや都農神社が有名。近年はふるさと納税に町全体で取り組み、宮崎牛などの返礼品が人気で納税額が全国2位になったり、道の駅を建設して県内の観光地で6位、年間60万人を集客するなど頑張っている。しかし、全国の地方町村と同様に人口減少が著しく現在は1万人弱、高齢化率38.8%で、2050年には人口が半減と予測。今年、唯一の県立高校も廃校になるなど、先行き厳しい状況ではある。
そんななかで、私は未来投資のまちづくりとして3つのジャンル、すなわち
「場づくり」「デジタルアソシエーション」「まちづくり教育」の3本柱で事業を進めている。一例を紹介する。
①「場づくり」
築90年の建物をリノベーションして「文明(BUNMEI)」という建物を作り、地元の高齢者と若い人たちの交流の場を作った。そのほか都農神社の参道の整備、町にある漁港や観光地の整備などを進め、また、「まちづくりホステル」を作って全国から町づくりに関心のある人をリアルに呼び込んでいる。
②「デジタルアソシエーション」
都農町では今年高齢者と子どもたち世帯にタブレットを配布した。これを使いこなせるように「文明(BUNMEI)」の1階にいつでも相談できるヘルプデスクを設置。そのほか孫世代、20代の若い方々が定期的に高齢者宅を訪問してサポートする仕組みを作った。地域医療も深刻化しているので、タブレットのトップページには「健康日記」と題して、宮崎大学医学部の総合診療医の先生はじめソーシャルワーカーさんにも協力していただきコラムを配信して健康意識を高めている。そのほか町の公式YouTubeやホームページも充実させて日々情報発信している。
その甲斐あって「デジタル社会推進賞・奨励賞」を受賞。「都農町デジタル・フレンドリー」でグッドデザイン賞BEST100に選出していただいた。
③「まちづくり教育」
都農町で働くことがワクワクするように「つのワク」という職場体験プログラムを作った。町内30の事業所に協力いただき、中学2年生が2日間職場体験をし、3日目には学校の体育館で中学生と事業所が一堂に会するなど出会いの場を多くした。体験するだけでなく中学生から事業所に提案をしたり、ズームで情報交換をし合うなど、様々なコンテンツを織り込んだ。また、中学3年間を通して総合学習の時間を使って、町の課題と解決策のアイデアを出し合い、プロジェクトチームを作ってアクションしていく取り組みもしている。
都農町では2050年「ゼロカーボンタウン宣言」を掲げている。その頃に町を背負って立つ今の小中学生に対して共に政策提言をしていけるよう、一緒に都農の未来を考えていきたいと活動している。
都農町で抱える過疎化や高齢化、少子化、デジタル化といった問題は、何年も前から言われ、全国の地方都市でも共通する問題だ。全く新しい斬新な解決法を示すのではなく、自分の経験を生かして少しスパイスを加えて、提案を強めていくのが私のやり方。わかっていることをさっさとやりましょうよというのが私のスタンスであり、自分の役割だと思っている。
様々な活動をしていくなかで一番大切にしていることは、「自分がワクワクできるかどうか」。自分がワクワクできる、というのは何か壁に当たった時に自分が頑張れるか、突き抜けることができるかにつながる。それが結果的には町民のためになる。自分が町に貢献できるとしたら、自分の強みが100%発揮できた時しかないと思うので、自己中のように聞こえるかもしれないが、自分がワクワクするという思いを大切にしてこれからもやっていきたいと考えている。