23/10/03
jimu

GNBC令和5年度9月例会・事業創造講座及び「東大IPCファンド」説明会のご報告

講演テーマ:
伝説の起業家支援者登壇!
「渦が巻くまであきらめない」~構想力・巻き込み力・実現力~
 
講師:
群馬県よろず支援拠点 チーフコーディネーター
(公財)日本生産性本部 認定経営コンサルタント 瀬古 裕美氏
 
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長きにわたり、地元企業の事業相談や支援に携わっている地域密着コンサルタント・瀬古氏より講話をいただきました。
 
コロナ禍を経て、世の中が大きく変わりました。その影響は今なお色濃く残り、地元の中小企業の多くは甚大なダメージを受けました。事業の継続が困難になったり、大きな方向転換を迫られている事業主も多くいらっしゃることと思います。その一方、柔軟な発想でピンチをチャンスに変え、右肩上がりの成長を遂げている企業もあります。
 
先の見えない時代に、生き残りをかけて奮闘する地元企業。勝ち抜くためには、自社の商品価値を高めて差別化を図り、ユーザーに「感動」を与えることが大変重要です。買い手は、目の前の物やサービスに感動して初めて「欲しい」と思うからです。
 
瀬古氏は、地元ビジネスの最前線で奮闘する事業主や若き起業家たちを、さまざまな形で支援しています。まず雑談などで交流を深めて事業の本質を見抜き、ときに相手を叱咤激励しながら有形無形のサポートをし、多くの企業の売り上げアップ、集客アップに尽力してきました。「物を売るということは伝えること。伝え方によって売り上げは大きく左右される」と切り出し、ご自身が直接携わった支援のほか、日本各地で発見した企業の斬新なアイデアを例に挙げ、「いかに魅力的に、分かりやすく伝えるか」を解説してくださいました。
 
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【紹介事例】
・株式会社能作の例
同社は富山県高岡市にある鋳物・鋳造を専門とする企業です。大正5年創業、仏具を製造しながら代々優れた技術を継承してきましたが、時代の変化にのまれて売り上げが激減、経営が立ち行かなくなりました。倒産危機に直面するなか、立て直しの陣頭指揮をとった娘婿の現会長は、大胆な発想で改革を試み、事業は見事V字回復を遂げました。
 
その勝機は、「錫は簡単に曲がってしまう素材。それが弱みである」という固定概念を、一転強みと捉えたところにありました。少しの力で自在に曲がることを逆手にとれば、自由な発想でものづくりができるのではないか。そんなアイデアのもと、手でくねくねと簡単に変形できる「KAGO」などの製品を考案。主に外国人をターゲットに訴求した結果、大成功したのです。その後も地元に「能作カフェ」をオープンしてオリジナルメニューを手がけたり、錫製の「鐘」を象徴とした結婚式「錫婚式」をプロデュースしたりと、培った確かな技と斬新なアイデアで目覚ましい活躍を見せ、県内外問わず着実に「能作」ブランドを築いています。
 
ほかにも瀬古氏が足を運んで目にした日本各地の成功事例を多数ご紹介いただきました。
羊羹を「スライスチーズ」のごとく薄く切って販売し、売上を500倍に伸ばした京都の老舗和菓子店、足のサイズを問わず誰にとっても快適なフィット感を追求した新しい形状の靴下「つつした」。軸点を少しずらして使い心地をアップした「ぬれない傘」や、鼻緒の位置をずらして快適な履き心地を実現した雪駄等々。
 
こうして見てみると、商品そのものは昔から日常的に使われていた身近なものばかりです。「当たり前のものを、ほんの少し変えてみることが大切」と瀬古氏は言います。
同氏が携わった地元企業への支援も含め、惜しみなく語られた多くの事例は、既成の枠に捉われない柔軟な発想と、変えることをためらわない行動力が大切であることを伝えています。
自社で取り組んでいる事業をもう一度客観的な視点で見つめ、弱みだと思っていたことを強みと捉えてみる。当たり前だと思っていたことに改めて光を当ててみる。そして「これだ」と思ったときには、思い切って行動する。そんな流れのなかで生まれる好循環が、今回の講話タイトルにある「渦」なのです。
 
「出会いと経験は宝」という言葉を胸に刻みながら各地にアンテナを張り、自ら足を運んで情報を集め、地元企業に還元している瀬古氏。「感謝の気持ちを常に忘れず、好奇心を持って日々邁進。それがユーザーの感動につながるはず」と、講話をしめくくりました。
 
生き生きとした熱い語り口に誰もが聞き入り、講話終了後、参加者からは「(瀬古氏から)発破をかけられた思いだ」、「現状に甘んじているだけでは駄目だ」との声があがりました。今回の講演を通して、「まだまだ頑張ろう」と、意気が上がった参加者も多かったようです。
 
 
説明会:
「東京大学におけるベンチャーの取り組みと東大IPCファンドについて」
 
東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 パートナー 美馬 傑 氏 
東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 アドバイザー 星 孝明 氏
 
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東京大学100%出資の事業会社「東京大学プラットフォーム開発(東大IPC)」が運用する投資ファンドについてご説明いただきました。
 
東大IPCは東京大学が100%出資する子会社で、若い起業家をさまざまに支援することを目的とした投資事業会社です。現在は「協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合(以下、協創1号)」と「オープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合(以下、AOI1号)」の2つのファンドを並行運用していて、「協創1号」が間接投資であるのに対し、「AOI1号」は直接投資であるという特徴があります。
 
東大におけるベンチャー育成の歴史はおよそ20年ほどで、「起業とは」「資金繰りとは」という基本的ノウハウや知識を伝授する「アントレプレナー道場」から少しずつ形を成し、現在に至っています。この20年の間に支援したベンチャー企業数も右肩上がりに増え、現在東大に関連のあるベンチャーは500社ほどになっています。上場企業も20社ほど生まれています。
 
支援分野はライフサイエンス(新薬や医療機器の開発)が全体の3割程度と最も大きなところを占め、他にハードウェア、ロボット系開発などがあります。少々変わったところでは、コンビニなどでのピッキング作業を遠隔で制御する技術開発も行われ、こちらもすでに大手企業との業務連携が進んでいるとのことです。
 
美馬氏による説明のあとは参加者からの質問を募り、活発な質疑応答が行われました。
 
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